摂食障害(過食症)に対する望ましい家族の対応
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ご家族へ 摂食障害への対応について

正しい認識を持たないまま摂食障害の患者さんへ接すると、過食や嘔吐などの症状悪化の危険があります。
適切な対応をして頂く為に、まずご家族の方には、摂食障害がどのような病気なのか知っていただく必要があります。

「摂食障害患者」=「意志の弱い人・だらしない人」ではありません

衝動が出てしまい仕事が全く手に付かなくなっている女性

アルコール依存や薬物依存と同様に「食べ物に依存する」心の病気が過食症です。
生活をする中で、必要以上に食べ物に捉われ、自らの意志で過食の衝動を抑えることができません。
過食症、摂食障害には嘔吐を伴う過食嘔吐、少食嘔吐、消化・吸収を阻止するための下剤乱用、噛むだけで飲み込まないチューイング等も含まれます。

過食症は食欲をコントロールすることが出来ない病気です。
摂食障害・過食症の患者さんは「わざとたくさん食べよう」としている訳ではなく、自分の意識しないところで食べ物が頭に浮かび、「食べたい」という気持ちが起こります。

患者さん本人は、親に言われるまでもなく、過食や嘔吐、下剤を止めるためのあらゆる努力をすでに試みていて、そのいずれにも失敗し、多くの挫折感を味わっています。
さらに過食や嘔吐、下剤乱用していることを自分の意志の弱さだと思い込み
「意志の弱い私はだらしないだめな人間」
「親、夫に申し訳ない」
と自分を責め、過食症、摂食障害を悪化させる悪循環に陥っています。

センターで相談を受ける人の中には、京大・東大の卒業生や、歯科医、医師、看護師、カウンセラー、大学教授、デザイナー、編集長など意志の弱い人、だらしない人にはとても務まらない様な高度な専門職についている人も大勢います。
「摂食障害患者」=「意志の弱い人・だらしない人」ではありません。
過食症患者さんは食行動だけがコントロールできないのです。

摂食障害は依存症です

摂食障害の方は、病気の害を分かっていても、症状をコントロールすることはできません。
タバコを吸っている人が、ひどい咳がでていてもタバコを止められなかったり、お酒を飲む人が、肝臓が悪くなってもまたお酒を飲んでしまうというように、依存症は分かっていても止められない病気なのです。摂食障害は食べ物に依存しないではいられない心の病気です。

この病気の人に対して、「なぜ、わざわざ食べて吐くのか。食べ物の無駄ではないか。」と思うご家族もいるかもしれません。
摂食障害の方の多くが、まさに同じような理由で罪悪感を抱いていますし、消えてしまいたい気持ち、自己嫌悪を抱えています。自分の食行動が「ふつう」と違うことを分かっています。中には、過食嘔吐を我慢して押さえ込み、そのリバウンドで症状が再発し、さらに以前よりも悪化して自分を責める、悪循環となっている方もいます。過食症の患者さんたちは夢や希望も見失い、過食から逃れることが出来ず、辛く苦しい生活を余儀なくさせられています。

それらの罪悪感や自己嫌悪、消えてしまいたい気持ちは、自分の命を敢えて危険にさらす行動や自殺につながりかねません。摂食障害の発病後、愛する人や家族がもしいなければ、自殺したいと思ったことがある患者さんはセンターの相談者の半数以上を占めます。実際に自殺未遂の経験のある患者さんも1割以上にのぼります。死んだほうがまだましだと思うほど、過食症は心身共に辛い病気なのです。

摂食障害は認知度が低く、間違った対応が症状悪化を招くことも

責められると病気が悪化するケースもあります

アルコールや薬物など、依存に伴う健康被害について、社会的にある程度知られているかもしれません。しかし、なぜ依存物質に頼ってしまうのか、依存する心の背景については、社会的な認識や理解は低いのではないでしょうか。
摂食障害に関して言えば、依存に伴う健康被害についても、依存する心の背景についても、社会的な認識や理解が明らかに低い、と言わざるを得ません。

摂食障害に対する偏見から、過食や嘔吐、チューイングをすることに患者さん自身が強い罪悪感を持ってしまい、誰にも相談できずに20年、30年もの長い間一人で抱え込んでしまうこともあります。
勇気を振り絞って告知しても、周囲に病気であると理解してもらえず、治すことに協力してもらえないどころか、本人のだらしなさ、意志の弱さだと逆に責められ、病気が更に悪化するケースもあります。
周囲の無理解や、本人の罪悪感は過食を悪化させる大きな要因です。

摂食障害(過食症)に対する望ましい家族の対応

過食症は本人の意志に関係なく食べることをコントロールできない病気です。
アルコールや薬物、ニコチン等への依存なら全く摂取しないことは可能ですが、食物を摂らずに生きていくことはできません。
過食症は食べることを我慢したり、制限させられるとかえって悪化することがよくあります。

患者さんは今まで何度も過食・嘔吐、下剤乱用を止めようとしてきました。
それでも止められず、死にたくなるほどの挫折感を味わい尽くしてきました。
それに追い討ちをかける様に食事を監視したり、しかったり、説教をして過食・嘔吐・下剤を強制的にやめさせようとすれば過食はますます悪化します。
家族に心を閉ざし、隠れて過食するようになるだけです。

「だらしない」「しっかりしなさい」「甘えている」「情けない」
「呆れた」「怠けている。働けば治る」「病気と思うから病気」
このような患者さんを責めるような言葉は厳禁です。

過食症の患者さんは、摂食障害という「死んだ方がまし」と考えてしまうくらいの、心も体も辛い病気にかかってしまっただけです。
病気を理解してあげることが患者さんの早期回復にとって何より大切です。

210515h