過食は、過食衝動を無くせば簡単に止まります。

ご家族の方へ 摂食障害はこんな病気です。

摂食障害の害

摂食障害は食べ物に依存する心の病気です。食べ物には、アルコールや違法薬物のような薬理作用はありません。しかし、摂食障害には病気としての害があります。
摂食障害の方の体型は、やせていたり、見た目は健康そうだったり、太っていたりと、様々です。過度にやせ願望が強く、今のままの自分に満足していないことは共通するでしょう。

やせが著しい場合、心臓に大きな負担がかかりやすく、元気そうに見えても非常に危うい健康状態にあります。カゼで高熱が出るだけでも、体のバランスがあっという間に崩れて突然死、ということになりかねません。死に至らずとも、やせた身体にかかる負担は徐々に増えていきますので、ゆくゆくは、寝たきりとなり介護が必要な状態になり得ます。
肥満がある場合、高脂血症、糖尿病、高血圧などを合併することがあります。それらの病気は通院や、時には入院も必要になることがあります。それらは心臓に悪影響を与えますし、心臓の機能が落ちてしまうと、やはり寝たきりとなったり、介護が必要な状態になり得るでしょう。
体型が普通でも、常に嘔吐をしているような場合、逆流性食道炎を合併することがあります。逆流性食道炎は放っておくと、食道がんの下地となる変化(バレット食道)を引き起こす、と言われています。

下剤を乱用していたり、アルコールや薬物などその他の依存症も合併している場合、身体への負担はさらに大きなものとなります。
摂食障害は命に関わる病気です。病気を放っておくと、将来的に様々な身体合併症に侵され、一人で社会生活、果ては日常生活を送ることもままならなくなるかもしれません。摂食障害を患っていない同年代の人たちの死亡率と比べ、摂食障害を患っている方の死亡率は高い傾向にあり、死因として、自殺、事故死、身体の合併症死があります。

摂食障害は心の病気

摂食障害の方は、病気の害を分かっていても、症状をコントロールすることはできません。
タバコを吸っている人が、ひどい咳がでていてもタバコを止められなかったり、お酒を飲む人が、肝臓が悪くなってもまたお酒を飲んでしまうというように、依存症は分かっていても止められない病気なのです。
摂食障害は食べ物に依存しないではいられない心の病気です。

摂食障害の心理的苦痛

この病気の人に対して、「なぜ、わざわざ食べて吐くのか。食べ物の無駄ではないか。」と思う方もいるかもしれません。
摂食障害の方の多くが、まさに同じような理由で罪悪感を抱いていますし、消えてしまいたい気持ち、自己嫌悪を抱えています。自分の食行動が「ふつう」と違うことを分かっています。中には、過食嘔吐を我慢して押さえ込み、そのリバウンドで症状が再発し、さらに以前よりも悪化して自分を責める、悪循環となっている方もいます。過食症の患者さんたちは夢や希望も見失い、過食から逃れることが出来ず、辛く苦しい生活を余儀なくさせられています。

それらの罪悪感や自己嫌悪、消えてしまいたい気持ちは、自分の命を敢えて危険にさらす行動や自殺につながりかねません。摂食障害の発病後、愛する人や家族がもしいなければ、自殺したいと思ったことがある患者さんはセンターの相談者の半数以上を占めます。実際に自殺未遂の経験のある患者さんも1割以上にのぼります。死んだほうがまだましだと思うほど、過食症は心身共に辛い病気なのです。

摂食障害と偏見

アルコールや薬物など、依存に伴う健康被害について、社会的にある程度知られているかもしれません。しかし、なぜ依存物質に頼ってしまうのか、依存する心の背景については、社会的な認識や理解は低いのではないでしょうか。摂食障害に関して言えば、依存に伴う健康被害についても、依存する心の背景についても、社会的な認識や理解が明らかに低い、と言わざるを得ません。

摂食障害に対する偏見から、過食や嘔吐、チューイングをすることに患者さん自身が強い罪悪感を持ってしまい、誰にも相談できずに20年、30年もの長い間一人で抱え込んでしまうこともあります。
勇気を振り絞って告知しても、周囲に病気であると理解してもらえず、治すことに協力してもらえないどころか、本人のだらしなさ、意志の弱さだと逆に責められ、病気が更に悪化するケースもあります。
周囲の無理解や、本人の罪悪感は過食を悪化させる大きな要因です。

莫大な過食費

1日千円過食する人は、1年間で約36万円も病気に費やすことになります。
60代まで続く可能性の高い病気ですので、25歳から45年間続いたとして1600万円以上になる計算です。1日5千円掛かる人は、8000万円以上です。
しかも過食は年と共に増える傾向があります。
1日千円だった過食費が2千円、3千円と増え続ければ過食にかかるお金は膨大になり、食べ物を盗んだり売春や風俗の仕事をせざるを得なくなることもあります。
このような行動は全て病気がさせていることであり、患者さんの人格とは関係ありません。それほど過食症は意志の力ではコントロール出来ない病気なのです。

世代間連鎖

子供は親の気持ちを全て感じ取りながら大きくなります。
アルコール依存症である親の子供はアルコール依存症になりやすいことが知られています。摂食障害の親の子供も摂食障害となりやすい傾向があるようです。センターでの相談経験から、その傾向は明らかです。過食症や依存症の親が子育てを行うと、病気ではない親に比べて子供も依存症になりやすくなります。これを世代間連鎖といいます。女の子であれば食べ物(過食症)や買物、男性依存、男の子であればギャンブル、アルコール、ニコチン依存や暴力、引きこもり等が、世代間連鎖として引き起こされ得るものです。
心の病気は親から子へ、子から孫へと何世代にも渡り引き継がれる可能性が高いのです。
※一般には親の育て方が過食症、摂食障害の原因といわれていますが、同じ環境で育ったにも関わらず、患者さんの兄弟で健康な人はたくさん居ます。過食は誰のせいでなく、いくつもの要素が重なり結果的に発病しただけです。必ずしも両親の育て方が悪かった訳ではありません。

160914h