Dr.かしくの摂食障害Q&A
摂食障害に関係する質問一覧
過食症状・合併症の質問
食べ過ぎと腹痛の関係は?
生理前の不正出血、過食の増加
母親が糖尿病です。いつか私も?
何故か眠れません
尿たんぱくが出ました
顔が丸くなった気がします
嘔吐しない私はマシな方?
薬の質問
病院・治療機関の質問
食べ過ぎと腹痛は関係ありますか?
内科にかかったところ、胃炎と過敏性腸症候群と言われました。婦人科も受診しましたが、超音波検査や血液のホルモン検査で異常なく、婦人科疾患は心配無さそうです。大丈夫でしょうか?(20代女性/過食のみ)
相談者さんの場合、内科で胃炎と過敏性腸症候群と診断されていて、婦人科疾患もなさそう、ということですね。
過敏性腸症候群は、精神的なストレスが引き金となり、腹痛や腹部の違和感、便通異常(下痢、便秘など)を呈する病気です。過敏性腸症候群の場合、腹部の症状は多彩で、症状は精神的な要因に左右されますので、一気に治ってしまうということは無いかもしれません。ただ、腹部の症状が悪化したり、腹痛以外にも血便などの症状を伴うようになった場合は、過敏性腸症候群以外の腹部疾患の可能性も考えられますので、再度内科受診が必要だと思います。
過敏性腸症候群といって、心理的な要因で腹痛や下痢、便秘などを呈する病気の可能性もあるかもしれません。
『激しいお腹の痛み』は健康な状態ではありえないものですし、一度内科や婦人科で精密検査することをおすすめします。
不正出血がありました
摂食障害で多いのは、無月経などの月経異常ですが、短期間の体重の変化によるホルモンバランスの崩れなどから不正性器出血となったりすることもあるようです。月経がちゃんとある、と思っていても、月経の間隔が短すぎたり、月経期間が短かったりすることが続くような場合は、排卵が起こっていない場合もあります。
月経でお困りのことがある場合は、適宜、婦人科受診も必要となるでしょう。
母親が糖尿病です。私も過食が続いたら発症しそうで不安です。
私の母が糖尿病で脳梗塞を合併し、今では意思の疎通もできず、ずっと施設に入っています。
過食するたびに、自分も糖尿病になったり、脳梗塞になったりするのではないか、と怖いです。
頻繁に内科を受診し、血液検査で糖尿病のチェックをしてもらっていて、数値に異常が無いと言われていますが・・・。(30代女性過食のみ)
糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病があります。
相談者様のお母様は、2型糖尿病であると思われます。
また、脳梗塞など重大な糖尿病合併症を発症していることからも、高血圧や高脂血症などメタボリックシンドロームの関与もあったかもしれません。
あなたには2型糖尿病になりやすい体質があるでしょう。
2型糖尿病の発症には、遺伝因子と環境因子が関わっています。
2型糖尿病になりやすい体質をベースとして、そこにさまざまな環境因子が加わることで、2型糖尿病が発症します。
2型糖尿病の遺伝因子は複数あると考えられており(多因子遺伝)、全容は明らかになっていません。
遺伝とは親から子に伝わるものです。
あなたには2型糖尿病の遺伝因子があると考えられます。
2型糖尿病に関わる環境因子は、過食、ストレス、肥満、運動不足、加齢があります。
あなたが過食症であるということは、2型糖尿病を発症しやすい環境因子をも持っているということです。
また、低出生体重、胎児期に子宮内低栄養があったことは、2型糖尿病のみならずメタボリックシンドローム発症の危険因子となります。
低出生体重、胎児期の子宮内低栄養は、第三の因子、言うなれば「胎児期の環境因子」でしょうか。
あなたの出生体重、胎児期の子宮内発育不全の有無も、2型糖尿病の発症に関わる重要な情報です。
ここで重要なことは、糖尿病と過食症は併存する病気の取り合わせとして、お互いがお互いに悪影響を及ぼす、最悪のものだということです。
まず、過食症は、2型糖尿病の環境因子である過食を主症状とする疾患です。
くり返す過食は、2型糖尿病の発症を早めることになります。
2型糖尿病になりやすいまったく同じ体質を持つ人が二人いたと仮定します。
一方が過食症で一方が過食症で無いのであれば、過食症の人の方が生涯を通じて糖尿病を発症しやすく、また、早い段階で糖尿病を発症する、ということです。
糖尿病を発症してしまったら、病院など医療機関での治療が必要になります。
糖尿病の治療の柱となるのは、食事制限などの食事療法です。
過食症の方が食事制限を行うと、それがストレスとなり、過食衝動を刺激し、過食が増えます。
一旦糖尿病が発症してしまえば、その治療に伴うストレスも相まって、過食症の病状が悪化しうるということです。
増える過食が糖尿病の病状を悪化させ、事態はどうしようもない悪循環に陥るでしょう。
糖尿病になりやすい体質のある方が過食症であったなら、まず一刻も早く、我慢することなく、過食を止めなければなりません。
それが糖尿病の発症を予防するために最も大事なことです。
止められない過食に憂え、将来の糖尿病に怯え、お母様の病状も心配で、あなたの心痛はいかばかりかとお察しします。
無理もないことですが、あなたは、ひどくつらい現状に溺れそうになっているのかもしれません。
血液検査で、HbA1cなどの、糖尿病の指標となる数値を適宜チェックすることは意味のあることです。
しかし、2型糖尿病を発症しないために、あなたにできることが他にあります。
それは、おそらくあなたができる予防策として、最も効果的なことです。
一刻も早く、我慢せずに過食を止めましょう。
しかし、過食の症状を自分でなんとかしようとすると、結果的に過食が増えるなど、病状が悪化しかねません。
我慢せずに過食の症状を止められる所を見つけてください。
過食衝動を無くせば、我慢することなく過食の症状は自然に止まります。
糖尿病を発症してしまっているのであれば、病院、医療機関での治療も必要になるでしょう。
その場合、過食衝動がある状態での糖尿病の食事療法は非常につらいものになります。
糖尿病の発症の有無に関わらず、あなたの最善策は、まず過食症の治療に取り組むことです。
なかでも最重要課題は、過食衝動を無くして、なるべく早く自然に過食が止まった状態になることです。
また、摂食障害、過食症では、病気であること、症状を恥じる傾向が強く、過食や過食嘔吐についてなかなか医師、医療従事者に伝えることができないようです。
過食は2型糖尿病の環境因子のひとつでもあります。
医療従事者への適切な情報提供は、自分自身の身を守ることにつながります。
過食について、通院中の内科の医師に伝えておいた方が良いでしょう。
何故か眠れません
3ヶ月前に心療内科で処方された精神安定剤(ジェイゾロフト)と入眠剤(ジアゼパム、フルニトラゼパム)があるのですが、それを飲んだり、市販の睡眠薬を飲んだりしても大丈夫ですか?ちなみに睡眠時間は3〜4時間です。1時間ぐらいで起きてしまい、朝までぐっすり眠ることは出来ません。(27歳女性/過食のみ)
休職している状態など、身体を積極的に休められる環境で、夜に3〜4時間眠れている場合、昼間に身体を横にする、などの工夫をすれば、必ずしも薬に頼らなくてもよいのではないでしょうか。
膀胱炎と尿たんぱく 過食との関係は?
膀胱炎の回復期に、尿蛋白がまだ出ている、と主治医に言われたのですが、何か気をつけた方がいいことはありますか?(40歳女性/過食嘔吐)
尿蛋白は過食症と何か関係がありますか?放置していて問題はありませんか?(25歳女性/過食嘔吐)
腎臓や膀胱に炎症があると、蛋白尿や血尿など、尿に異常がでます。
過食や嘔吐行為が腎臓に直接的に与える影響は大きくはありません。
しかし、嘔吐や下剤のあやまった使用などにより、身体のミネラルであるカリウムが下がると、腎臓の尿細管という部分を痛め、蛋白尿が出ることがあります。
低カリウム血症など、身体のミネラルバランスの異常がないかどうか、腎臓や膀胱に炎症がないかどうかを、内科などで精密検査することをお勧めします。
また、過食嘔吐に伴い、著しいやせ・低栄養がある場合や、利尿剤(尿を強制的に出す薬)を常用している場合は特に注意が必要です。著しいやせ・低栄養があると、食べ物からではなく、全身の筋肉から身体のエネルギーが作られます。膀胱は筋肉に覆われた臓器ですので、膀胱の筋肉も身体のエネルギーとして使われてしまい、膀胱の壁が薄くなって、尿を出したり溜めたりがうまくいかなくなることがあります。出し入れがうまくいかなくなって尿の流れがよどむと、膀胱炎などの感染症が起こりやすくなります。膀胱炎は蛋白尿や血尿の原因となります。夜尿(おねしょ)がでることもあります。栄養状態が良くなれば、膀胱も元に戻るようです。
また、利尿剤は腎臓に直接働きかけて尿をしぼりだす作用があるので、乱用すると腎臓へのダメージも大きいと思われます。腎臓のダメージの度合いによっては、蛋白尿や血尿があらわれたり、高血圧や身体のむくみにつながることがあります。
著しいやせ、利尿剤の常用に心当たりのある方は、内科での精密検査をおすすめします。
顔が腫れている気がします
過食嘔吐する人より、しない方がマシ?
私が過食嘔吐し始めたころ、教科書で摂食障害について調べてみたことがあります。
そこには、極端に痩せた、タバコを吸っている女性のイラストがあって、摂食障害に付随する症状としてアルコール依存症などの記載がありました。
(私はアルコール依存症じゃないから、摂食障害とはちがうのかも。そうであったとしても、マシな方なのかな。)
そういう考えがよぎったのを覚えています。
その頃には、まさか数年後の自分が、連日の過食嘔吐に加え、連日飲酒するようになるとは、夢にも思っていませんでした。
「○○が無いから、大丈夫」
「○○に比べたら、まだマシな方」
あなたは、こういう考え方でもって、自分自身の現状を楽観視しようとしたことがありますか?
このような心の動きそれ自体が、摂食障害の病的な心性です。
過食衝動がある時点で、あなたが摂食障害、過食症という病気であることに変わりありません。
嘔吐していないからマシ、などの比較に意味はありません。
もちろん、過食のみの場合、チューイングや嘔吐行為による身体の負担はありません。
そのかわりに、過食そのものに伴う身体の負担があります。
腹痛・吐き気、過食後の異常な眠気などの症状です。
過食が積み重なって内臓脂肪が蓄積すると、高脂血症、2型糖尿病など、生活習慣病を発症しやすくなるでしょう。
過食による身体への負担だけではありません。
過食のみの場合、過食後の抑うつや自責、罪悪感が非常に強く出るため、引きこもりなど社会活動の低下も誘発されやすいようです。
過食した後、心理的につらすぎて、友人との約束を守れなかったり、仕事に行けなかったりしたことはありますか。
あるとすれば、それが過食の弊害なのです。
また、チューイングや嘔吐がなく、過食だけであっても、下剤や利尿剤の誤用や、過食後の絶食や過剰な運動が見られる場合があります。
これは、精神疾患の分類基準のひとつであるDSM-5に当てはめると、過食嘔吐を主症状とする神経性過食症(神経性大食症)や神経性やせ症(神経性無食欲症)の過食・排出型に分類されうるものです。
嘔吐がなくても、過食嘔吐を主症状とする摂食障害の病型と同じと判断されうる、ということです。