摂食障害(過食症・過食嘔吐・チューイング・下剤乱用)相談
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摂食障害とアダルト・チルドレン

摂食障害に見られる犯罪行為にアダルト・チルドレンとしての特性が関わっている

摂食障害、過食症では万引きをくり返している方がいます。
過食衝動に根差した過食に伴う盗み食いや万引き、止められない過食に伴う強い不安へのストレス対処行動としての万引きについては、すでに述べました。
摂食障害、過食症の方が万引きに至るプロセスは、これらの機序以外にもいくつか存在します。
そしてそのプロセスに大きく関係しているのが、摂食障害の方に見られる、アダルト・チルドレンとしての特性です。
このアダルト・チルドレンとしての特性は、摂食障害の方を、万引きのみならず、犯罪、反社会的な行動、性的逸脱へと駆り立てうるものです。

摂食障害、過食症の方は、アダルト・チルドレンと共通した特性を多く有しています。

アダルト・チルドレンを取り巻く諸問題

アダルト・チルドレンとは、親の病気など、さまざまな問題の影響で家族機能の損なわれた家庭で子ども時代を過ごした人のことです。
養育者に依存症があったり、精神面の問題があると、子どもは子どもらしく育つことができません。
アダルト・チルドレンは、医学用語ではなく、個人的な自覚のようなものです。

しかしアダルト・チルドレンには、それこそ摂食障害・過食症、アルコールや薬物の問題、多重嗜癖(クロス・アディクション)、うつ病や解離性障害などの精神障害、不登校、犯罪、自殺など、広範囲に渡るさまざまな問題が付きまといます。
アダルト・チルドレンには、複雑型PTSDという医学的な病態が当てはまります。

アダルト・チルドレンのなかには、他人に迷惑をかけぬよう、静かに暮らしている方が大勢います。
しかし、一般社会の常識や道徳を理解し、それを守るほうが生きやすいことを知っていても、アダルト・チルドレンとしての特性が、彼らを犯罪や性的逸脱行動へと駆り立てることがあります。
アダルト・チルドレンとしての特徴は、具体的にはどのように、その行動に影響を及ぼすのでしょうか。

アダルト・チルドレンの特性

「ひま」だから過食する

多くのアダルト・チルドレンとしての特徴は、自尊感情の低さから説明できます。
ここでいう自尊感情とは、そのままの自分でOK、というような感覚です。
自尊感情は目に見えるものではなく、その高低や有無を自覚するのは難しいかもしれません。
自尊感情と生存本能は、本質を異にするものです。

自尊感情が低いということは、生きるのも難しいほどの大きな心理的苦痛を伴います。

絶え間なくその心理的苦痛に曝されると生きていけないので、アダルト・チルドレンは、その耐えがたい感情を麻痺させ、退屈感や空しさとして感じます。
この退屈感、空しさが、タバコ、アルコール、違法薬物、過食・過食嘔吐・チューイング、危険な人間関係(DVなど)など、あらゆる依存物質や危険な嗜癖の入り口となります。
「ひま」だから過食や過食嘔吐、チューイングする方は、アダルト・チルドレンの要素を持っているでしょう。

また、常に他者から言葉と態度で「あなたはOK」というサインを出し続けてもらわないと、寂しく、不安でたまりません。
これが、アダルト・チルドレンに見られる他者への過度な承認欲求です。
これが得られないと、アダルト・チルドレンは怒りや恨みの感情を抱くこともあります。

それが自分自身に向くと、抑うつや無力感、心身症として表現されたり、他者や社会に向くと、暴力的行動や反社会的な行動、犯罪として表現される場合もあるでしょう。

自己処罰としての万引き

自尊感情が低いと、自己イメージにまとまりが無いため、極端に自己を矮小に感じたり、極端に肥大して感じたりします。
自分など道端の石コロほどの価値も無いと感じたり、逆に、自分はできる、自分ならば許されるという感覚に陥ったりします。
アダルト・チルドレンが、情け容赦なく自分に批判を下したり、その真逆に、誇大的な考えを持ち尊大にふるまったりするのは、そのためです。
自己批判が行き過ぎると自傷行為につながったり、わざと罰せられたり、怒られるようなことをしてしまいます。

摂食障害、過食症に見られる盗み食いや万引きは、アダルト・チルドレンとしての、この自罰傾向とも深い関わりがあります。
自覚には薄いでしょうが、罰せられる、怒られると分かっていて、敢えて、見つかるまで万引きするのです。
そもそも、過食や過食嘔吐、チューイング行為は自分の身体を痛めつける行為でもあり、一種の自傷行為でもあるのです。

犯罪行為に対する罪悪感

摂食障害に見られる万引きの特徴として「罪悪感が見られない」というような記載を専門書で目にします。
アダルト・チルドレンの特性のうち、自己を誇大的に捉え、自分ならば許されるというような感覚でもって万引きした場合、「罪悪感が見られない」様子になるかもしれません。
しかし、実際には、罪悪感と自責に震えながら万引きについて話す摂食障害、過食症の方は意外に多いのです。
摂食障害、過食症では、アレキシサイミアといって、自己の感情の気付きに乏しい状態に陥っていることも多く、彼女たちの表面上の訴えを鵜呑みにするだけでは、その本質を見誤りかねません。
万引きに対して、罪悪感が無いようにふるまうのは、誇大的な自己をバリアとし、自分のせいじゃないと虚勢を張らなければ、自己嫌悪・罪悪感でそれこそ死んでしまいたくなるような状態が隠されているのかもしれません。
被害者から抜け出す方法が分からずに、自分ひとりであがいた結果、加害者の道を選んでしまう場合もあるようです。

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