摂食障害(過食症・拒食症・過食嘔吐・チューイング・下剤乱用)相談
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過食衝動を無くすには

なぜ過食するのでしょうか?

過食には心理的要因と生理的要因の二つの要因があります。過食の要因を語るうえで、心理的要因は根本的な核の部分と言えるでしょう。

この病気の人はなぜ過食するのでしょうか?
それは、過食衝動があるからです。

食べることに心を奪われて居ても立ってもいられなくなったり、ソワソワしたりするような感覚が過食衝動です。過食衝動があるから過食や過食嘔吐、チューイング、下剤常用という行動に至ります。

この過食衝動の元になるエネルギーを、ここではマグマと定義します。

摂食障害の人がこの世に生まれてから今現在に至るまでに蓄積された様々な負の感情が、過食衝動の源であるマグマです。マグマは無意識に抱え込んできた未消化の心のマイナスエネルギーなので、通常の状態ではその存在を意識できません。

蓄積されたマグマは過食のエネルギーとなり、活火山の如く出口を求めて噴火します。過食衝動となって過食や過食嘔吐、チューイングなどの行動に至るのです。

過食衝動を感じて過食や過食嘔吐に至る一連の出来事は、活火山の噴火、マグマの噴出のようなものです。

過食衝動は意志の力ではどうにもなりません。
外的な働きかけで強制的に過食や過食嘔吐を止めても、噴火している火山にふたをしているようなもので、より大きなエネルギーとなっていずれ爆発します。

過食の量や頻度が年々増加したり、習慣化したりする要因として生理的要因があります。
依存症に陥りやすい人の脳もまた、依存しやすいのです。
脳が過食による快感を覚えやすく、また、慣れやすい生理学的構造をしているために過食の量・時間が刻々と増えていき、過食が経年増加したり慢性・遷延化したりします。依存症の悪循環のループに陥ってしまうのです。

例えば入院などで過食や過食嘔吐などの症状を強制的にコントロールしたとします。強制的に症状を止めることで生理的要因をある程度断ち切ることができるかもしれません。しかし、退院して自由になると過食や過食嘔吐が再発します。これは、過食症病理において心理的要因の占める割合が非常に大きいことを示しています。

もともとあるマグマから過食衝動が起こり、過食・過食嘔吐・チューイングなどの行動に至り、その結果生理的要因を含む悪循環が起こる仕組みとなっています。

強制的に症状を止めることで生理的要因を減じても、過食のもとになっている過食衝動を無くさない限り根本的な治療になりません。

つまり、心理的要因の解決が過食症治療のカギということです。

過食衝動の源であるマグマを無くせば、過食や嘔吐、チューイング、下剤常用などの行動も無くなるのです。

過食衝動を無くすには?

マグマ排出をすることが、過食衝動を無くす方法です。

マグマ排出

マグマを排出するとはどういうことでしょうか。

マグマは、摂食障害を発症する人が生まれ落ちてから今現在にいたるまでに蓄積された負の感情であることは上述しました。

生きていれば、嬉しい、楽しいなどの正の感情、辛い、苦しいなどの負の感情、いろいろな感情が湧いてくるものです。

色とりどりの感情は私たちの人生を豊かにしてくれますが、感性豊かな人は人生の喜びを強く感じるとともに、悲哀もまた強く感じてしまう場合があります。感じてしまっては生きていけないほどの強い負の感情に対しては、心理学的に「否認」というプロセスが働き、負の感情が「無かったこと」にされてしまいます。生きていくための防御反応です。

生きるのも耐え難いほどの辛く苦しい感情を消化できずに、無意識に抱え込んでしまっている状態がマグマが蓄積された状態です。

マグマは産まれてから現在までのどこかの時点で形成されており、形成された時期や大きさは人それぞれ異なります。幼少期に虐待を受けたことのある人は主に幼少期に多くのマグマが蓄積されていることが予測されますし、特定のパートナーからDVなど暴力行為を受けた人は、その時期に多くのマグマが蓄積されていると予測されます。

この蓄積されたマグマを無くしていくのが、マグマ排出です。
「無かったこと」にされてきた辛く苦しい自らの感情を体験し、消化していくのです。

マグマ排出は患者さんひとりでは出来ません。マグマには安定した精神状態を保つことができない程のエネルギーが含まれており、普段は自覚できないような心の奥深くにしまわれています。そのため外部からの働きかけがない限り自らのマグマを感じることはできません。
普段は意識されないような心の部分を扱うことは、非常に繊細な作業であり、それにふさわしい安全を感じられる空間や人間関係が必須となります。

なかでも、状況にふさわしい共感ができる相手、介助者の存在はとても重要です。心理的に安全を保障してくれる介助者とともに、マグマを蓄積せざるをえなかった心理的な痛みに触れ、自らの感情を体験していくこと、これがマグマ排出です。

介助者にふさわしい人とは?

摂食障害の人の耐え難い寂しさ、辛さに共感できる人は限られます。

マグマ排出に携わる介助者には、患者さんが何でも話せるような気配りができることはもとより、ポイントを絞ったマグマ排出の促しや、本格的なマグマ排出時期の心のケア等きめ細やかな対応が求められます。

このような適切な対応は、実際にマグマを排出させたことのある摂食障害の回復者でなければ難しいでしょう。

頭で考え想像することで共感すること、気持ちで感じて情動的に共感すること、この二つの共感のバランスがマグマ排出において重要です。同じ病気を経験していること、マグマ排出を経験していること、回復していること、これらによってバランスのとれた共感ができます。

充分な経験を積み多くの患者さんと接する機会のある医師やカウンセラーであっても、自分自身が摂食障害の苦しさ、辛さを経験していない人が摂食障害の患者さんの繊細で複雑な心の働きを理解することは非常に困難です。

また、マグマの性質や排出の仕方は患者さんごとに個々で異なるため、それぞれの患者さんに合った違うタイプの介助者が適宜必要になります。10人以上など、複数の介助者の居る治療施設での治療が望まれます。

スーパーバイザーについて

自助グループのミーティング等、患者さん同士の情緒的なつながりの場では、摂食障害に対する偏見はないでしょうし、心理的に比較的安全と考えられます。
しかし「全員が公平」「リーダーを置かない」という性質のものですので、病気を悪化させるような共依存関係が生じる危険性があります。マグマ排出に必須の安全な空間と人間関係が保てなくなる可能性があり、そういった場ではマグマ排出はできません。

摂食障害について正しい知識を持ち、場に即した的確な判断ができる健常者(スーパーバイザー)の存在が非常に重要となります。

場の空気から人間関係に至るまで空間全てを健常者の視点から見ることで、マグマ排出にふさわしい場を保つことができます。

そのようなスーパーバイザーの視点は、行動修正や対人関係のスキルアップを図る等、患者さんにとっての現実的対処の助けになることもあります。

スーパーバイザーの存在は、摂食障害治療の全経過において回復の道筋を見えやすくしてくれる治療の要ともいえます。 

スーパーバイザーの指導のもと、摂食障害で苦しんだ経験を持つ介助者が患者さんに寄り添い状況に即した適切な対応をしていくことではじめて、安全でより効果的なマグマ排出を行うことができます。

疑似停止・疑似軽減について

「過食嘔吐さえ無ければ、〇〇できるのに。」
多くの人がそう感じているのではないでしょうか。

結婚や出産、引越しなどの大きな環境の変化に伴い、一時的に症状がストップまたは軽減することがあります。
依然としてマグマがある状態で、一時的に症状がストップしたり軽減した状態を「疑似停止」「疑似軽減」といいます。

マグマに蓋がされたような状態になって、症状がほとんど無くなり、過食・嘔吐・チューイング・下剤等の行動が止まります。

日々症状に振り回されてしまうこと自体がストレスになっている場合、症状がなくなることで得られる解放感はとても大きいでしょう。
症状がストップまたは軽減することで、過食や過食嘔吐の生理的要因を断ち切ったり弱めたりすることができます。

「疑似停止」「疑似軽減」による小休止は、自分自身の心を見つめるきっかけとなる場合もあるでしょう。そして、過食や過食嘔吐、チューイングに費やしていた時間を冷静に考えたり行動する時間として使えます。
患者さん自身が冷静に考えたり行動することは摂食障害から回復するために必要不可欠なことです。

「疑似停止」「疑似軽減」は一時的にマグマに蓋がされた状態であり、溜まったマグマは依然として存在しています。マグマ排出をせずに、溜まったマグマが無くなる、ということはあり得ません。

マグマに蓋がされるきっかけとなった環境の変化や刺激への依存に慣れてきてしまえば、通常1週間〜数ヶ月以内に過食が再発します。

この仕組みを理解し、症状が止まったり軽減しても油断せず、治療に向けた具体的な行動を取ることに努めましょう。

171208h