摂食障害(過食症・拒食症・過食嘔吐・チューイング・下剤乱用)相談
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摂食障害治療ガイドライン

『摂食障害治療ガイドライン』と最新治療

はじめに

摂食障害は難病です。難病の存在は現代医療の限界を示すものとも考えられるでしょう。
難病である摂食障害に対して、現在の日本の医療には何ができるのか、患者さんは医療に何を期待すればいいのか、患者さん自身がこれを見極めることは治療に不可欠なことです。
『摂食障害治療ガイドライン』は、摂食障害医療の現状を知る手掛かりとなります。

摂食障害は身体合併症、精神科合併症・併存症が多彩で、関わる専門科が多岐にわたります。しかし摂食障害をとりまく状況は非常に厳しく、治療体制から医療行政に至るまで不備の目立つ状態です。
摂食障害患者さんは医療機関から避けられる傾向にすらあります。

患者さん自身が病気の知識をつけること、現在の医療に提供できるものを知ることが、一番の治癒への近道となるでしょう。患者さんが自身の治療に積極的であることは、自分自身の身体と心を守ることになります。

治るために何をすればいいのか分からない患者さんも多くいることでしょう。
摂食障害について正しい知識をつけることで得るものははかりしれません。
まずは『摂食障害治療ガイドライン』を読んでみてはいかがでしょうか。

『摂食障害治療ガイドライン』
監修:日本摂食障害学会
編集:「摂食障害治療ガイドライン」作成委員会
2012年02月発行

ガイドライン引用部分

コメント部分

日本の摂食障害医療の現状

今後の研究により心の発症要因が明らかになるならば、摂食障害の予防法の開発に大いに寄与するものと考えられます。(p.47)

現在までの多くの調査が、発症した後の患者の観察から得られたものだと言うことに注意が必要です。従って、個々の患者を前にして、それは発症因子なのか、あるいは症状・病態を維持あるいは悪化させているだけの可能性はないのか、さらには病気の二次的結果に過ぎないのではないのか、などと慎重にかつしっかりと見極める必要があります。(p.47)

このように、ガイドラインの「発症要因」という項目において摂食障害の原因ははっきり分からない、と婉曲に表現されています。

今日においては薬物療法の位置づけとしては、他の治療法を容易にしたり、またはその効果を高めることで摂食障害からの回復に役立つ手段となりうる補助療法と考えられています。(p.127)

摂食障害を治してしまう薬は無いということです。

過食嘔吐やさまざまな衝動的な行動は結果であって、その症状自身を治療の対象にするというより、症状につながる背景にある心理(社会)的要因に注目して治療しなければいけないことを認識して治療に当たらなければなりません。(p.82)

一応治療が終結しても、環境の変化や対人関係の問題などで症状の再燃をみることも稀ではありません。この疾病が人間形成のある部分を表現していると考えると、ライフサイクルのさまざまな場面で、不適応状態としての食行動異常の再燃は不思議でもなんでもありません。(p.86)

普段の生活における日常のストレスでは症状のコントロールはできても、大きな、突然来るそれなりのストレスに対しては、そのときとりうる自己防衛的なストレス対処としての過食嘔吐などは仕方がありません。(p.86)

少し乱暴な言い方ですが、再燃・再発するのは摂食障害の背景に隠れる精神病理を正しく把握せず、そこの治療を行っていないからです。的確に治療されていれば再発・再燃することはないのです。息の長い治療関係を築き、再発のおそれのないところまで摂食障害を継続させている背景・持続因子を治療するのが日本での現実的な解決策です。(p.182)

過食嘔吐などの行動が結果であって行動をどうにかするよりも、症状につながる心理的要因に注目して治療しなければならない、ということが分かっていても、摂食障害の背景・持続因子を治療するしかない、というのが今の医療の現状です。
そもそも摂食障害の原因が分からない状態なので、原因か結果かはっきりしないものの「背景・持続因子」を治療するしかない、ということでしょう。
その結果、治療終了後も再発、再燃する率が高いことや、大きなストレスの反応としての過食や過食嘔吐は、「仕方がない」、「不思議でもなんでもない」という対応にならざるをえません。

若い女性にとってダイエットは日常茶飯事となっており、その延長として、過食や自己誘発性嘔吐でさえ珍しくなくなっています。しかし、それらが多くの女性にみられるとはいっても、彼女たちの全てが摂食障害になるわけではありません。(p.116)

摂食障害の治療を行う専門家の認識がこうである、という事実は憂慮すべきものと思われます。

そこ(対人関係のストレス)から生み出される負の感情が、日々の過食のエネルギーを供給します。過食は、それらの負の感情から束の間逃れるために自分を麻痺させる手段として用いられている、と理解します。(p.116)

対人関係のストレスなど、今あるストレスによっても過食のエネルギーは生まれるでしょう。
過食衝動から過食に至るという概念がはっきりと無いこと、過食衝動の無くし方が分からない以上、摂食障害の持続因子となりうる対人関係のストレスを減らすことで、長期的に見て過食の軽快を図るのは、現実的な策と言えるかもしれません。

摂食障害患者の入院目的:2) 身体的飢餓を解消するとむちゃ食いの衝動が軽減することを経験させる。(p.146 表8-2)

身体的飢餓による生命維持のサインとしての過食行動は疑いの無いところです。
しかし摂食障害の方の中にはやせのない過食嘔吐の方も多く存在しますので、病気本来の過食衝動は身体的飢餓による「むちゃ食いの衝動」をはるかに上回るものと予測されます。

「過食を我慢する」というのは、セルフヘルプのようにみえて、あまり効果的なヘルプではないといえます。(p.77)

「過食を我慢すること」は「病者の役割」に含まれないということを明確にします。(p.115)

観察しているだけで、症状が減るのかと半信半疑な方が多いのですが、自分の症状を全部把握すると、かなりのコントロール感がでてきます。(p.77)

ガイドラインの記載からは、我慢して過食や嘔吐などの行動を止めることが有益でない、病者の役割として過食を我慢しなくてよい、などの表現がみられることもあれば、過食嘔吐などの症状を観察することでかなりのコントロール感がでてくる、という表現もあり、過食や過食嘔吐への医療者側の対応が統一されていない現状が伺えます。

日本の摂食障害医療の粋を集めた『摂食障害治療ガイドライン』には、「過食衝動」という用語は p.107 表7-5に2つしかでてこず、「過食衝動」という用語とほぼ同義と思われる「むちゃ食いの衝動」という用語は、p.146 表8-2に1つ認めるのみです。

医療者側の共通認識として、過食衝動から過食や過食嘔吐、チューイング、下剤常用の行動が生じること、過食衝動は意志の力でどうにもならないことなどの、過食を止める上で非常に重要となる概念が無いと思われます。

現在の日本の医療では、我慢せずに過食を止める方法が分からないのです。

171208h